4月「一斤染(いっこんぞめ)」

こんにちは。
カラープライマリー久保田みきです。

日本の伝統色シリーズとして
その月にあわせて
古くから愛されてきた色を
ご紹介しています。

お誕生月の方、おめでとうございます。
4月はスタートの月です。
新しい出会いや、はじめての場所で
ドキドキとワクワク・・・
ある方も、無い方も。
今月もおつきあいください。

4月の色
今年は例年よりも桜の開花が早かったですね。
しかしながら、入学式や入社式のイメージといえば「桜」

4月は、そんな桜をイメージさせる「一斤染」のご紹介です。

日本には、四季折々の美しい花を愛でる文化があります。
昔の人はその美しい花の色をなんとか着物に移すことができないかと
様々な工夫をしてきました。

1月の誕生月カラー「深緋(こきあけ)」でもお話しましたとおり
色の鮮やかな染料が十分に取れなかった平安時代、
濃く深い紅色は「禁色(きんじき)」と呼ばれ
上流階級のみが、身に着けることのできる色でした。

ちなみに紅色は紅花からとれる色ですが
紅花は「べに花油」のCMで
その姿を覚えている方も多いかもしれませんが
実はとても鮮やかな黄橙色をしています。

あの花からどうしてあんなに赤い紅色が生まれるか
不思議かもしれません。
紅花の花びらから黄色の色素を水に溶かしだし赤色だけを残すのです。
とても手間がかかる染色です。

「一斤染」はその紅花を、通常の染めの1/10程度である
一斤=600g使って
着物になる反物(二反分)を薄く淡く染めあげた色です。

一般の市民にも身に着けることを許された色
別名「聴色(ゆるしいろ)」とも呼ばれます。

一斤
最近専門店が相次いでオープンしている流行りの食パンですが
その単位は「一斤(いっきん)」と言います。
これは、日本古来の重さの単位で
食パンの一斤が約600gであることに由来します。

 

日本人が限られた条件のなかで
色を楽しむことに長けていた歴史が他にもあります。

江戸時代、力をもった町民の派手な暮らしぶりを戒めるために
「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」を幕府が発令し
「茶色」「ねずみ色」「藍色」などの地味な色しか
身に着けることができないようにしたのです。

ここで生まれたのが「四十八茶百鼠」
48の茶色と100のねずみ色と言われるような※実際はそれ以上です
色の微妙に異なる様々なバリエーションをたくさん作り出したのです。
藍色も染め方や重ね方の違いで多くの色の名前をもちます。
地味な色ではなく「粋な色」。
濃淡や色合わせの見分けは、日本人の得意とするところです。

限られた条件のなかで、
工夫することでこれまでになかった楽しみを見つける。

今こんな時代だからこそ
そうありたいと願います。

 

おまけの色の話
布を桜色に染めるには
桜の花ではなく、桜の蕾がふくらむ前の樹皮から染めます。
桜が咲く前の枝は、ほんのり赤く色づいています。
桜の樹全体が、赤のパワーでみなぎっているようです。
日本人が桜を好きな理由
桜を見ると元気になる理由は
このあたりにあるのかもしれません。